レギュラー番組/菅原明子の「エッジトーク」

●ゲスト---大阪大学総長の鷲田清一さん
≪放送日 2009年5月27日(水)・6月3日(水)23:00~23:30 ラジオ日本≫


「生と死」に対する考え方が希薄になっていると感じる一方で、「生きている理由」「生き続ける理由」を、しいては、「死なないでいる理由」を、と何かしらの『理由』を考える現代の「生と死のあり方」。

『理由』は、そんなに必要なことなのだろうか?

今回2週にわたってお送りしたのは、国立大学法人大阪大学の総長であり哲学者でもある鷲田清一さんを迎え、昨年、2002年に小学館から刊行した『死なないでいる理由』を再構成し新規追加原稿で構成・編集した文庫本『死なないでいる理由』(角川ソフィア文庫)を中心に幸福論、受験勉強や子育てに関する教育論など、お話を伺いました。

大変難しい哲学書が多いなか、『死なないでいる理由』は、エッセイ風にまとめられていて、とても読みやすい本です。

なぜ、今、『理由』が必要なのか?
幸福論、受験勉強や子育てに関する教育論に鋭く切り込んだエッジなトークが展開されました。


「今の時代、生きることや生き続けることに理由が必要となった。昔は、人生のあらすじ・コースが決まっていた。どう生きようと考えなくても道が定まっていた。今は、生きる選択肢が増えた。選ぶのがものすごく難しい。何でもなれる時代。これしかないといような決定的なものはない。」(鷲田)
「昔は、(これしかないというような)背水の陣があった。」(菅原)

現代社会の『幸福』について「今、がんばれば・・・」というように、今、がんばる理由が先に設定されている『幸福の先送り』的発想があるという。
「年をとった場合、思い出で生きるしかない。」(鷲田)
「今日を生きる 哲学がない。」(菅原)

受験勉強についての弊害も指摘する。
「受験勉強のやり方が勉強のやり方と思われている。現実の社会は逆、わからない問題を先に考える。」(鷲田)
試験で勝ち抜いた人は、その後の入社や昇進で不安感が大きくなっていくという。
「勝てなかったら・・・というように、条件付きでしか認められない存在ではないかと不安になる。条件付きの人生。条件付きでしか認めあわない世界。」(鷲田)
「最近は、結婚も条件付きですね。」(菅原)

子育てについても、「作品を作る感じの親が増えている。子育ての本来の楽しみとは、どんな人間になるか想像つかない楽しみがあること。」(鷲田)
「天才と言われ続けるとなれる。」(菅原)
「今は、こうなってもらいたいが先に来る。最近お会いした一番素敵だと思ったお母さんは、子供を紹介後、ニコニコしながら『子どもと合わないんですよ。』と。思い通りにならないことがいいこと。」(鷲田)

『教育』について、「教育という文字にあるように『教える』と『育てる』との他動詞の組み合わせと考えがちですが、『育てる』ではなく『育つ』(自動詞)。つまり、勝手に『育つ』環境整備が大事なんです。」(鷲田)



今回のエッジトークの内容がより詳しくわかるのは『死なないでいる理由』(角川ソフィア文庫)です。現代の「生と死のあり方」をやさしい言葉で書かれた哲学エッセイです。ぜひ読んでみてください。

次回のゲストは、リチャード・クーさんです。6月10日(水)・6月17日(水)23:00~23:30・ラジオ日本「菅原明子の『エッジトーク』をお楽しみに!